「総合技術監理の範囲」について

「技術士成語における総合技術監理部門の技術体系(通称青本)」より抜粋

【総合技術監理の範囲】
 技術士総合技術監理部門では、企業などの組織における技術業務全般を見渡し、安全性や経済性などに関する総合的な判断に基づいた監理を行うことが可能な技術者を育成、認定することを目的としている。
 総合技術監理の範囲としては、主として経済性管理人的資源管理情報管理安全管理社会環境管理があり、それに加えて社会的規範や国際的ルールを包括した倫理観や国際的視点なども含まれる。
なお、この総合技術監理において「監理」という文字を使用しているのは、総合技術監理が上述した各管理やその他の内容を総合して監督する概念であることを明確にするためである。
 実社会において組織活動やプロジェクトの監理を行う場合、各管理の重要性や優先順位は、組織活動やプロジェクトの目的もしくは規模によっても異なってくるものであり、一意的に定まるものではない。例えば、過去に多くの類似経験を有するビル建設などのプロジェクトでは経済性管理が優先されるであろうし、規模が小さくとも特殊な危険物を扱う施設の建設では安全管理が優先されるであろう。従って、総合技術監理を実施する者は、その組織活動やプロジェクトの内容毎に、各管理の優先順位や実施手順などを検討し、必要にして十分な監理を実施することを必要とする。
 各管理はそれぞれが密接な関係を有しており、お互いに相関を有する場合がほとんどである。例えば環境被害が生じたとき、それが社会環境管理の失敗というよりは、事故という安全管理の失敗によりもたらされ、その背景には人的資源管理あるいは情報管理の抜け落ちがあった、ということも散見される。また、安全管理や社会環境管理を実施する場合、その対策に必要となる費用をどれだけかけるかという根本的な問題に対して、経済性管理としての判断が必要となる。
 先に挙げた5つの管理の関係を企業の生産活動を例として整理をすると、以下の通りとなる。企業などの組織が生産活動を行いながら組織を存続していくためには、品質・納期・コストなどを管理する経済性管理を行うだけではなく、主として自組織の構成員と設備の安全及び社会からの信頼性を守るための安全管理を行うとともに、主として外部環境を守るための社会環境管理を有効に機能させる必要がある。また、このような管理を行うに際して投入できるリソースには当然制限があり、組織内の重要なリソースである人的資源と情報を有効に活用する必要がある。つまり、前述したように総合的な判断に基づく監理を行うためには、経済性管理、人的資源管理、情報管理、安全管理、社会環境管理を総合的に行う必要が生じる。

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