「令和2年度 電験2種 電力」について

-目次-
1.A問題
2.B問題

1.A問題
(配点は1問題当たり小問各3点,計15点)
【問1】
次の文章は,水素冷却発電機の水素ガス制御方式に関する記述である。

 水素冷却発電機は水素ガスの漏えいや,空気の侵入を防止するため,水素ガスシール装置を備えている。水素ガスシールは回転子軸とシールケーシング内に取り付けたシールリングの間隙に,機内水素ガス圧力と比べ高い圧力の油を供給し,この油が水素ガス側と空気側に流出し続けることで水素ガスが機外に漏洩するのを防止している。
 シール油の制御方式のうち,連続掃気方式は,使用後のシール油をそのまま供給する方式で,シール部と発電機本体の間に隔室を設け,ここから純度の低い水素ガスを排出している。


【問2】
次の文章は,架空送電線路の雷害対策に関する記述である。

 架空送電線路の雷害対策として,送電線への直撃雷を防止するために架空地線を設置することが有効である。架空地線の条数を増やせば,遮へい角は小さくなり,遮へい効率は向上する。架空地線や鉄塔に雷撃が生じると,雷撃電流は鉄塔を通して大地に流れる。これによって鉄塔の電位が上昇し,がいし連の絶縁耐力を超えると鉄塔から電力線に逆フラッシオーバが発生する。これを防止するためには,塔脚の接地抵抗を小さくする必要があり,棒状の接地電極を埋め込むが土壌の性質によっては埋設地線を設けたりする。


【問3】
次の文章は,電力系統の短絡電流に関する記述である。

 同期発電機の増加や送電線の新増設等により,系統容量の増大や系統連系が密になることによって,系統事故発生時の短絡電流が大きくなる。短絡電流の増加により,送変電機器の損傷増大や,周辺通信線への電磁誘導障害が考えられるため,以下のような短絡電流抑制対策を施す必要がある。
a)現在採用されている電圧より上位の電圧の系統を作り,既設系統を分割する。
b)発電機や変圧器のインピーダンスを大きくする。
c)送電線や母線間に限流リアクトルを設置する。
d)系統間を直流設備で連系する。
e)変電所の母線分離運用を行う。


【問4】
次の文章は,架空配電系統の環境調和設備に関する記述である。

 配電設備は地域の実態,都市化の進展に対応して技術開発が進められている。具体的には,環境調和とあわせてビル火災時の消防活動や,構造物との離隔確保などの安全対策,さらには都市美化を兼ねた対策を施している。
 上記の一例として占有スペースの縮小化を目的としてコンパクトな都市形装柱が開発されている。この装柱には,高圧線を架空ケーブルとする方式と,絶縁電線を縦引にする方式がある。
 架空ケーブル方式は,ビルの消防活動を円滑にするため,建物との離隔確保を図っており,柱上変圧器は,2 台の単相変圧器を一つの筐体に収め異容量 V 結線としたもので,電灯負荷に加え動力負荷も供給可能としている。また,その下部に架空ケーブルを施設しており,都市美化とあわせて消防車のはしごをかける範囲を拡大している。
 絶縁電線方式は,道路側に電線を架線できる D 形腕金を使用し,建物との離隔を確保している。


2.B問題
(配点は1問題当たり小問各2点,計10点)
【問5】
次の文章は,水路式発電所に関する記述である。

 水路式発電所は河川の水を取り入れ,比較的長い水路で発電所に導いて落差を得る方式であり,その主な設備としては,取水口,取水ダム,沈砂池,導水路,ヘッドタンク,水圧管,水車,発電機,放水路及び放水口からなる。
 取水口はごみの流入を抑制する目的で河川と直角にとることが多い。また,取水ダムには排砂門を設け,洪水時などに取水口付近に堆積した土砂を排出する。
 次に,取水した水は,沈砂池に入る。ダム式発電所と異なり,取水中の土砂は取水口で完全に除くことができないため,ここで,水の流れを緩やかにして,導水路に入るまで土砂を十分に沈殿させる。導水路には,主に開きょや無圧トンネルが用いられる。岩盤が堅固なところでは素掘りのままとする場合もあるが,多くはコンクリートなどで内面の巻立てを行う。
 ヘッドタンクは,水圧管の手前に設けられ,水路末端の断面積を広げて容積を大きくしたものであり,最終的な土砂の沈殿や落葉などのごみの取り除きを行うほか,発電所負荷の急増時には水の補給を行うなどの機能を有する。また,負荷遮断等の負荷急減時に,水路から流入してくる水を河川に放出するための設備を余水吐という。


【問6】
次の文章は,電池電力貯蔵設備に関する記述である。

 電池電力貯蔵設備は,需要家の負荷平準化,緊急時のバックアップ電源などに用いられてきたが,近年は再生可能エネルギー発電の出力変動に対応するための送電系統の周波数制御に用いる実証試験等も行われるようになった。そこでは,電極活物質などが異なる様々な二次電池が用いられている。
 ナトリウム・硫黄電池は,二次電池の中では比較的,理論エネルギー密度が高いなどの特長を有している。同電池では,円筒形状の単電池を断熱容器に格納し,正極・負極活物質を溶融状態に保つため 300 °C 程度に保つ。このためヒータの消費電力量が大きくならないような運用形態で使用することが望ましい。
 また,電解質として有機溶媒電解液等を用いたリチウムイオン電池は,二次電池の中では充電効率が比較的高く,常温動作であるなどの特長もあることから,電気自動車用も含めた様々な用途で利用が進んでいる。リチウムイオン電池は,ナトリウム・硫黄電池に比べ C レートを高くとることができるため,比較的小さい電池容量 [kW·h] で大きな出力 [kW] を得ることができる。
 これらの二次電池以外に,電解質タンクの大きさを増すことで電池容量 [kW·h] を増大できるなどの特長を有するレドックスフロー電池も,送電系統用として使用されている。
 二次電池を運用するにあたっては,過充電,過放電を避けつつ電池容量を有効に利用するため,満充電時に対する充電状況を比率で表した SOC を適切に管理する必要がある。SOC の推定方法は電池種別により異なるが,例えば電池の開回路電圧を用いて推定するなどの方法がある。


【問7】
次の文章は,発変電所に設置する開閉設備に関する記述である。

 遮断器は,平常時の電力の送電及び停止の際に負荷電流を開閉するために用いられており,送配電線や発変電所内の機器に短絡・地絡が発生した際は故障電流を遮断するために用いられる。
 断路器は,発変電所内の回路の保守作業を行う際に安全のために作業箇所を電圧のある回路から切り離すことなどに用いられる。一般的に断路器は,単に電圧が加わっている回路で電流が流れていないときに開閉できるが,変圧器の励磁電流や送電線の充電電流,複母線の場合において甲母線から乙母線に運転を切り替えるときに流れるループ電流などの開閉ならば行うことができる。

タイトルとURLをコピーしました